ほうかいのじゅもん

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「おかえりモネ」が面白い

みなさん、今季の朝ドラ「おかえりモネ」を見ていますか? 僕は見ています。
宮城県気仙沼出身の主人公を描いたドラマ。宮城県は自分の地元であるということもあり、普段は朝ドラ……というか、ドラマ自体あまりを見ない僕も、毎日録画して楽しんでいます。
そこで、僕が思う「おかえりモネ」の魅力を語りたいと思います。


魅力その1: 登場人物が全員「良い人」

これはおそらく脚本の基本原則として意図されたものだと思うのですが、「おかえりモネ」には「悪役」が登場しません
これが、普段あまりテレビドラマを見ない僕でも、「おかえりモネ」を受け入れられた大きな理由のひとつです。

(僕の印象では)大衆的なテレビドラマには、意地悪な姑、嫌味な上司、イジメっ子のクラスメイト等、所謂「明確な悪役」が登場することが多いです。その明確な悪役をぎゃふんと言わせるようストーリーを展開させることで、視聴者の溜飲を下げる、というのが定石です。
そして僕は、「明確な悪役」がこれ見よがしに登場するドラマが好きではありません。これは個人の性格によるものだと思いますが、フィクションだと分かっていても、ドラマ上の悪役の悪行を見るのが不快なんですよね…。娯楽のためにドラマを見ているのに、そこでわざわざ不快な思いをしたくないのです。
もちろん、その「悪」なる存在が、物語の上で欠かせない、深遠な意味を持っているのであれば話は別です。が、大抵の大衆ドラマでの「悪役」は、いわば「視聴者がスカッとするため」だけに存在しており、不快感を上回る存在意義があるとは思えません。

それでは「おかえりモネ」はどうかと言うと、今のところ、そういった「悪役」が1人も登場しないのです。
登場人物が全員「良い人」、とは言っても、キャラクター全員がいつもニコニコして主人公を全肯定かというと、そうではありません。
このドラマには、各々個性を持った人物が登場し、時には主人公のモネと意見を異にすることもあります。が、それはその人物がその人物なり考えを持っている上での対立です。また、その対立はドラマ内で、真っ当なコミュニケーションを通して解消されます。これが非常にストレスフリーであり、心地よさを感じます。

たとえば物語中で、主人公のモネが気象に関する勉強を始めたばかりの頃のこと。彼女はまだ浅学であった知識をもとに、森林組合のベテラン作業員クマさんに、山の天候に関して忠告をします。しかし、経験で山の天気を熟知しているクマさんに、それを一蹴されてしまいます。
視聴者目線から見ても「勉強を始めたばかりの素人である主人公が出しゃばって、空回りしまった」というこの展開。モネは、職場上司である森林組合職員から、その「空回り」について指導されます。そこに不快さや不必要な辛辣さがないのです。誠実なコミュニケーションに基づいて、新人職員の「空回り」を的確に指導していたこの流れは、一般企業のコーチング研修で例示されてもおかしくないほど真っ当でした。

ということで、主人公のモネの周りに登場する人々は、彼女のことを暖かく見守りつつ、過ちは適切に正していきます
「ぎゃふんと言わされるためだけの絶対悪は、世の中に存在しない」という「おかえりモネ」の世界における基本原則は、見ていてとても心地よいです。


魅力その2: 「朝ドラの定番」に捉われない非常によく練られた脚本

朝ドラとしては初めて筆を取った安達奈緒子さんによる脚本が素晴らしい
あまり朝ドラに詳しくはない僕でも知っている「朝ドラあるある」に、「1~2週目は主人公の子供時代から始まり、3週目から突然大人になる」というものがあります。個人的に、なぜ子供時代を描く必要があるのか本当に謎な「定番」です。(おそらく、子役からスタートした方が視聴者が定着して率が稼げる、とかいう経験則があるのでしょうか)

一方、「おかえりモネ」は、主人公のモネが高校を卒業し、地元の気仙沼を離れて就職をしたところから物語が始まります。
何やら意味深な過去を抱いていそうな伏線をチラ見せしつつ、主人公のバックグラウンドに関して多くを語らない序盤。そして第3週目、気仙沼に帰省したモネが旧友と再会したことをきっかけに、時間を遡り、彼女の中学生時代が描かれます。

このような、「朝ドラの定番」に捉われず、時系列を順方向に辿るだけではない物語の進行と、伏線のほのめかし方はお見事です。


魅力その3: 物語を通して描かれる「死生観」

この朝ドラの放送前に聞いていた物語のテーマは「主人公が気象予報士になって成長していくお話」というものでした。
しかし始まったドラマを見ていて、「気象予報士」というものは物語を動かすための舞台装置であり、実際にドラマを通して掲げられているテーマは「死生観」である、と感じています。

このドラマは、東日本大震災から10年となることを踏まえて、宮城県を舞台に作られています。物語の中で、震災は非常に重要なキーとなっており、主人公だけではなく、多くの登場人物に影響を与えた出来事として扱われます。

生きるとは何か?
生き残るとは何か?
身近な人の死を経て、それでも生きるとは何か?

物語の舞台が東京に移ってからは、震災に直接触れていない登場人物を通して描かれるこのテーマが、より深みを増しているように思えています。
物語の中で通奏低音のように流れる「死生観」というテーマが今後どのように展開し、ひとつの帰結を迎えることになるのか、注目したいと思います。


おわりに

というわけで、真面目に長ったらしく語ってしまいましたが、一言でまとめると、「おかモネ面白いよ!」です。

正直なところ、小難しいこと考えずに見ても普通に面白いです。
ごく単純に菅波先生(根っから理系脳のお医者さんなのですが、この理系描写が本当にそれっぽく、「あ〜あるある、そういうこと言いがち」と思わされるのです)とモネの焦ったい恋愛にやきもきしながら見るもよし、さすがNHKと言う他ないリアルな気象予報士の舞台裏に感心しながら見るもよし。

物語もあと2ヶ月ほど。これまで見ていなかった方がここから見始めるのは、正直厳しいかもしれませんが……。
毎日楽しく見ているおかモネファンの皆さん、ぜひ一緒に、最後までモネの物語を見届けましょう!